株式会社ぐるり 代表 中野賢伸
横浜国立大学 経済学部4年に所属する中野賢伸は、子供のころから、様々な地域の史跡巡りや日本百名城スタンプラリーのスタンプ集めに没頭するなど、歴史大好き少年でした。特に、教科書などでは実感が持ちづらい歴史を、実際に現地に足を運ぶことで新たな発見が生まれることや、その地域の歴史歴背景を知り、過去と対比することで、より地域への理解が深まるなど、その行動は、いつの日か地域の魅力を掘り起こすレベルにまで達していました。
そんな中野に転機が訪れます。大学の活動の一環で在学期間中にベンチャー企業を立ち上げた方々の話を聞く機会があり、彼らの話から湧き出てくる情熱や挑戦に対する前向きな姿勢に大きく背中を押されることになります。自分の好きなことを徹底して取り組むことが、ビジネス創出につながる!という大きな可能性に魅了され、中野は知人と共に、株式会社ぐるりを創業することを決意します。
株式会社ぐるりのサービスは、インバウンド等によるオーバーツーリズムを、歴史的資源を活用して分散化を図り、独自の古地図や音声ガイドを通じて付加価値の高い観光ソリューションを自治体や観光協会等に提供するものです。既に、神奈川県を中心とした9自治体にシステムを収めるなどの実績を有しています。
中野賢伸のサトヤマミライカイギへの参画
学生発ベンチャーでありながら実績を上げつつある中野が、なぜサトヤマミライカイギへの参画を決めたのか?東京都が展開する地域創生事業「NEXs Tokyo」におけるミートアップイベントにおいて、サトヤマカイギ代表の高志保氏との出会いがきっかけとなりました。
創業以降順調にビジネスを進めてきた中野ですが、少しの違和感も同時に感じていました。自治体からの要望に応えていくうちに、どこか提供されるリソースを作業的にコンテンツ化している。歴史・文化にまつわる一般的な情報のみが提供され、子供のころから感じていた物語を探求するようなワクワク感や人々との交流をもたらすようなサービスになっているのだろうか?そう感じるようになっていました。
中野は、「これまでの旧態依然とした観光の文脈で、コンテンツをプロットしていても何も面白くない。もっと多様で多くの方々が関わりながら、多様なストーリーをどんどんアップしていくコミュニティを作っていかないと、結局すぐに消費されてしまう。日本の地方都市には多くの歴史的ストーリーが埋もれている。それらを市民参画で掘り起こすコミュニティを一緒に作ろう!」。高志保氏からのアドバイスにハッと気づかされました。どこか、ビジネスを中心にとらえすぎてしまい、効率を求めすぎていた自分がいたのです。
島根県立隠岐島前高等学校生との連携
サトヤマミライカイギメンバーとなった中野が、最初にアプローチした地域が島根県隠岐郡海士町です。10月6日、7日にかけて開催されたサトヤマカイギには、島根県立隠岐島前高等学校生や東京学芸大学の学生、そしてサトヤマミライカイギのメンバーが参加。世代・分野を超えたメンバーがチームを編成し、地域を深掘りするフィールドワークを実施する中で、地元高校生が知っている地域のニッチな情報や、地域住民へのインタビューを重ね、最終的に地域のリソースを繋いだ物語を各チームが創出しました。
創出された物語の中には、フィールドワーク中に見つけた蜘蛛と人間の視点を対比させ地域を散歩する物語や、中心地から外れたところにポツンとあるたこ焼き屋の主人の思い出をベースとした物語など、魅力的かつユニークな物語が数多く創出されました。
中野は、こんなにも多様で、人々の感情を動かす魅力的な物語が創出されたことに、驚きました。もっともっと多様な物語があっていい。そのためには、サトヤマカイギとの連携を通じて、もっと多くのコミュニティと出会い、繋がり、いろいろなストーリーが創出される継続的な場を構築し、分散的に「株式会社ぐるり」のサービスを成長させていく!中野はそう決意しました。
中野は、引き続き海士町の高校生との連携を図り、年度内に高校生目線の物語を海士町のサービスとして提供するプロジェクトを発足する計画をしています。さらに、静岡県焼津市でも実証実験を行い、同様に焼津市の高校生とのコラボレーションを計画しています。中野の挑戦はまだまだ続いていきます。