地域で磨かれた「個」の力が、
未来を動かす源へ。
AKATSUKIカンファレンス レポート

AKATSUKIプロジェクトとは

AKATSUKIプロジェクトは、全国各地の補助事業者が人材発掘・育成プログラムを様々なエリアで展開し、IT分野を中心に優れたアイデアや技術を持つ地方の若い人材を発掘・育成するためのプロジェクトです。この度、本プロジェクトに参加する補助事業者が一堂に会し、ナレッジの共有と成果報告を目的とする、「AKATSUKIカンファレンス 最終報告会」を2026年2月20日(金)に、東京都・ベルサール九段で開催しました。計24の事業者が一堂に会しその成果を報告した、熱気に満ちた一日の様子をレポートいたします。

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AKATSUKIカンファレンス レポート

冒頭のご挨拶 経済産業省 大臣官房審議官 奥家 敏和

冒頭、経済産業省 大臣官房審議官 商務情報政策局担当の奥家敏和からご挨拶を差し上げました。

「未踏との関わりは2000年の立ち上げ時に遡りますが、私が未踏事業を担当していた2007年からの数年間は、事業存続の危機に直面していました。『とにかくこの火だけは消してはならない』と必死に守り抜いた未踏が、今では多くの起業家を輩出する日本最大の苗床となったことを、非常に嬉しく思います。

このAKATSUKIプロジェクトの構想を議論し始めたのは2021年頃でした。当時は『未踏の精神を日本全体に広げたい』と願う一方で、本当に地域でこれほどの人材を盛り上げきれるだろうかと、期待と不安が交錯していました。しかし、2023年に事業が始まってから届く報告は、不安を吹き飛ばすものばかりでした。北海道で事業成果を見た地元の起業家が『私財を投げ打ってでも支援したい』と申し出てくださったり、九州では未踏出身の先生方が『自分たちが若手を引っ張り上げなくてどうするんだ』と熱い思いで支えてくださったりしています。短期間でこれほど日本全国が盛り上がりを見せていることは、何より嬉しいことでした。

皆さんの活躍するフィールドは、政府の戦略分野で定めるAIや半導体、デジタル・サイバーセキュリティといった、これからの世界を支える最前線に広がっています。この場所でのネットワークを糧に、皆さんが世界に向けて大きく羽ばたいていくことを願います」。

奥家審議官による冒頭のご挨拶

事業者の取り組み・成果・学びの共有

令和6年度事業として採択された計24の補助事業者より、それぞれのプログラムの取り組み内容・成果について共有いただきました。会場には、北は北海道、南は沖縄まで、幅広い地域から若手クリエータの方にお集まりいただきました。発表では、単なるプログラム内容の報告に留まらず、「未だ不踏の領域に一歩踏み出すこと」や「自分が本気でやりたいことに没頭すること」といった、AKATSUKIプロジェクトが大切にしている指針が体現されていました。

これを受け、未踏アドバンスト事業プロジェクトマネージャーの漆原茂氏は、クリエータの姿勢を高く評価しました。「登ろうと思わない人を無理やり登らせることはできません。ここにいる皆さんは、自分自身の意志で高い山に挑もうとした主役です。実際にプロジェクトを動かしてみると、崖っぷちに立つような困難や、ルート変更を迫られるような場面もあったでしょう。しかし、その過程でかいた汗は、何よりも尊いものです。皆さんの作ったプログラムが成果なのではなく、挑戦し、成長したクリエータ一人ひとりがこの事業の本当の成果です。皆さんが描く未来社会を、私たちは心から楽しみにしています」。

若手クリエータによる発表
未踏アドバンスト事業プロジェクトマネージャー漆原氏からの応援メッセージ

ポスターセッション

すべての発表が終わった後、補助事業者および若手人材によるポスターセッションが行われました。会場では、プロダクトのデモを前に、地域や年齢を越えた活発な意見交換が展開されました。

「なぜその技術を選んだのか」「社会にどう実装していくのか」といった深い議論が各所で見られ、発表内では伝えきれなかったこだわりや、開発の舞台裏を共有し合う、非常に密度の高い時間となりました。自身のやりたいことを深化させるプロダクトや地域によって異なる課題へアプローチをするプロダクトなどに対して、クリエータ同士が互いに刺激を受け、新たなネットワークが形成されていく様子は、まさに本プロジェクトが目指す「挑戦を応援し合うコミュニティ」そのものでした。

当日、各ブースに掲示されていた取組内容のポスターは、以下のリンクからご覧いただけます。

代表クリエータの発表内容

ポスターセッションの様子

トークセッション
「AKATSUKIアフターストーリー」

続いて、プロジェクトを卒業し、それぞれのフィールドで新たな一歩を踏み出している3名のクリエイターと、彼らを見守り続けてきたプロジェクトマネージャー(PM)陣によるトークセッションが行われました。セッションの口火を切ったのは、函館工業高等専門学校3年生の成田美碧氏です。

成田氏は、地元の伝統産業である昆布漁が衰退していく現状に危機感を抱き、技術者としての視点から廃棄される「ガニアシ(昆布の根)」の有効活用に挑みました。プロジェクトを通じて得た最も大きな学びについて、成田氏はこう語ります。「誰かと協力して活動する中で、他人が動けなくなってしまったとき、それを人のせいにせず『自分に何ができるか』と自責で考える力がつきました。自分を変えることで周りが変わる。その気づきが、今の私の原動力になっています」。

続いて、株式会社Pignet 代表取締役の山下裕也氏が登壇しました。山下氏は、福島と熊本という二つの地域を拠点に、地方の飲食店のSNSマーケティング課題を解決するプロダクトを開発し、法人化を果たしました。山下氏は、開発が停滞しそうになった苦しい時期を振り返り、「PMから『ここでやりきるかどうかで君の人生は大きく変わる』と強い言葉で背中を押されました。あの時の必死な2ヶ月間が、今の起業家としての自信に直結しています」と、伴走者の存在の大きさを語りました。

また、北見工業大学大学院 博士後期課程に進んだ平塚心太朗氏は、自身の家族の経験から生まれたリハビリ用XRアプリの開発について紹介しました。平塚氏は、「人は環境によって変わります。AKATSUKIという、やりたいことに没頭し、キラキラと輝く先輩や仲間が集まる環境を自ら選んだことが、博士課程への進学や、その後の未踏事業への採択という道に繋がりました」と、志を同じくするコミュニティの重要性を説きました。

これらの若き才能を支える側として、一般社団法人新雪 理事・PMの水丸和樹氏からは、育成の本質について語られました。水丸氏は、「AIが発展した今、それっぽいものは何でも作れます。だからこそ、PMとしては『それは本当に君が本気でやりたいことなのか』と問い続けることを大切にしています」と語りました。また、地域の中に先輩が後輩を導く「縦の繋がり」が生まれている現状を挙げ、こうしたコミュニティこそが、地方から継続的にイノベーターを輩出する鍵であると指摘しました。

最後に、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の鈴木氏から、「AKATSUKIでの経験はゴールではなく、皆さんの長いキャリアのスタート地点です。ここで得た熱い繋がりを一生の宝にして、さらなる高みを目指してください」と締めくくられ、会場は次なる挑戦への高揚感に包まれました。

AKATSUKIプロジェクト卒業生の成田氏、山下氏、平塚氏、新雪プログラムPMの水丸氏、IPA鈴木氏によるトークセッション

全体の総括 東京大学名誉教授 竹内郁雄氏

最後に、東京大学名誉教授 未踏事業統括プロジェクトマネージャー、一般社団法人未踏 代表理事の竹内郁雄氏から、カンファレンス全体の総括としてスピーチをいただきました。

「今日、会場の皆さんの顔を拝見していて、その熱気が大変眩しく、素晴らしい発表の連続であったと感じています。本プロジェクトも3年目を迎えましたが、今回はまさに一つの完成形と言える、未踏のエッセンスが凝縮された成果報告会でした。私自身、朝から夕方まで皆さんの話を聞いていて全く疲れを感じないほど、非常にハッピーで充実した一日でした。各地域のPMもプロジェクトの精神を深く理解し、若者の可能性を最大限に引き出す支援体制を全国に定着させてくれました。この3年間で築かれた基盤は、間違いなく日本の人材育成における大きな資産となっています。

特に今日、印象的だったのは、『規格外のアスパラガスを捨て去るのではなく、エナジードリンクにする』という発想。これが、まさに私たちが取り組んでいる活動の本質に近しいのではないかと感じました。

社会の既存の枠組みには収まらないかもしれない『規格外』の突出した才能を、地域で見落とさずに掘り出し、磨き上げ、社会を動かす強力なエネルギー、いわばエナジーソース、力の源へと変えていく。北は北海道から南は沖縄まで、地域を問わずこうした才能は等しく存在しており、それを丁寧に収穫していく地道な取り組みこそが、日本全体の未来を支える力になると確信しています。皆さんのような個性豊かなエナジーソースが、ここからさらに広く社会へ波及していくことを心から期待しています」。

全体の総括をする竹内郁雄氏

ITを駆使してイノベーションを創出することのできる独創的なアイデアと技術を有し、これらを活用する優れた能力をもつ、突出した人材を発掘・育成する未踏事業では、未踏IT人材発掘・育成事業、未踏アドバンスト事業の2つの人材育成プログラムを実施しています。以下のリンクより事業の詳細についてご確認ください。

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